コラム
2026/02/19 2026/03/26

労働者性について

労働基準法上の労働者

労働基準法は、賃金、労働時間、時間外・休日労働、割増賃金、解雇予告等、労働条件に関する最低基準を定めています。
労働基準法に違反する労働条件で雇用していたことが発覚した場合、使用者には刑事罰が科される可能性があり、他方、被用者側からすると、労働基準法を根拠に未払いの残業代の支払いを求めたり労働条件等の是正を使用者に求めたりすることができます。
このように、雇用に関する法律関係は労働基準法等によって規律されているといえますが、この規律が及ぶのは当事者の一方が「労働者」であることが前提となります。
労働基準法上、「労働者」とは、「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。」と規定されていますが、雇用契約関係がある場合はもちろん、「雇用契約」ではない契約関係、例えば業務委託契約などに基づいて労働が提供される場合であっても労働基準法上、「労働者」と判断される場合もあります。
このため、例えばフリーランスの方であっても、必ずしも未払いの残業代等を諦める必要はありませんので、一度専門家にご相談いただくことをおすすめします。

具体的事例

では、どのような場合に労働者性が肯定・否定されるかについてみてみると、

労働者性が肯定された例としては、

  • アイドルグループのメンバーについて労働者性が認められた例
  • 私立幼稚園の園長について労働者性が認められた例
  • 配送業務委託契約関係にある運送・配送ドライバーについて労働者性が認められた例

等があります。

他方、労働者性が否定された例としては、

  • 作業場を持たずに1人で工務店の大工仕事に従事する形態で稼働していた大工について労働者性が否定された例
  • 自動車の運転手について労働者性が否定された例

等があります。

考慮要素

このように、「労働者」であるかどうかについては、肯定例・否定例いずれも多数の裁判例がありますが、その判断に関しては、「使用」されて「賃金」が支払われている関係にあるかどうかが重要な基準となります。この基準は、一般的に「使用従属性」と呼ばれています。

そして、裁判例等において考慮された事情を分析すると、概ね以下の事情が考慮されていることがわかります。

仕事の依頼に対する諾否の自由の有無

仕事を受けるかどうかを自由に決めることができる場合は、一般的な使用関係とは異なり、使用性は弱くなります。

業務遂行上の指揮監督の有無

指揮命令や指示を受けずに自由に業務を遂行できる場合には、使用性は弱くなります。

場所的・時間的拘束性の有無

勤務時間や場所が自由に選択できる場合には、使用性は弱くなります。

代替性の有無

他人による代えが利く場合、使用性は弱くなります。

報酬が労務の対償として支払われているか

提供した時間の長さに応じて報酬が決まるような場合には、一般的な雇用関係と近いものとなります。

事業者性の有無

本人が所有する機械、器具が著しく高価な場合には、自らの計算と危険負担に基づいて事業経営を行う「事業者」としての性格が強く「労働者性」を弱める事情となります。
また、報酬の額が同一企業の同様の業務に従事している正規従業員に比べて著しく高額である場合には、一般的に「労働者性」を弱める事情となります。

専属性の程度

他社の業務に制度上制約されていたり、時間的余裕がなく事実上困難であったりする場合には、その業務への専属性の程度が高く、その役務提供者は経済的に当該企業に従属していると考えられるため、「労働者性」を補強する事情の一つといえます。

その他

その他、採用、委託等の際の選考過程の内容、報酬について給与所得としての源泉徴収を行っているか、労働保険の適用対象となっているか、服務規律が適用されているか、退職金制度、福利厚生を提供していること等、「使用者」がその者を労働者と認識している行動をとっているかどうかも考慮されます。

 

このように、「労働者性」に関する考慮要素は多岐にわたっており、その判断は複雑です。
このため、雇用契約関係にないから労働者としての権利行使が認められないと独自に判断せずに、一度専門家にご相談いただくことをおすすめします。
当事務所では、初回30分までは無料でご相談いただけますので、お悩みの方は、お気軽にお問い合わせください。

監修者

佐々木 亮
監修者

フリューゲル法律事務所

弁護士 佐々木 亮

学習院大学法科大学院を修了後、司法試験に合格し、都内法律事務所での経験を経て、2025年よりフリューゲル法律事務所に加わりました。

現在は、建物明渡請求や賃料回収といった不動産分野に加え、現代的な課題であるIT・ネット上のトラブル解決にも力を入れています。また、離婚や不貞慰謝料などの男女問題、遺産分割をはじめとする相続分野においても、依頼者の皆様の不安を解消し、正当な利益を守るために真摯に対応しています。

日々の業務では、現場の状況に即した迅速な解決を大切にしています。複雑に絡み合った法的問題を整理し、粘り強い交渉を通じて、依頼者の皆様にとって最善の出口戦略を提示します。若手ならではの柔軟な視点と緻密な調査力を活かし、一つひとつの事案に丁寧に向き合っています。

保有資格

弁護士(東京弁護士会所属:登録番号64913)

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